テキスト・アーカイヴ
■写真製版を歩く[番外編] スキャニング(どう入力するか)の基礎19項(初出:会報35号)
■13:デジタル・スキャナとアナログ・スキャナの違い

スキャナは、色を光の三原色RGBに分けて、各256階調で読みとっている。256階調は8bitの情報量に相当する。256×256×256=16777216色である。1670万色というよく聞く数字はここからきている。同時にそれは、8bit×8bit×8bit=24bitで色彩を処理しているということだ。

色彩処理する単位がピクセルである。光電管とCCDは、アナログのフィルターとして機能している。光電管とCCDを通過した電気信号をスキャナ内部でピクセルに置き換えて制御するのがデジタル・スキャナである。色調や階調情報をピクセルで管理することで、像の鮮鋭度が高まり、またデータが他の機器に渡った場合にも安定性が保たれるなどの特徴がある。機械の操作はいかにもデジタル機のようでも実はアナログ処理されている機種が多い。デジタル機の普及はこれからだ。

■14:ピクセルの数とピクセルの中味は違う

35mmのフィルムは、1cm2あたり30万画素の情報をもっているとされると書いたが、その画素は銀塩という物質だから、可能なかぎりどこまでも拡大して見ていくことができる。分子のレベルまで目撃できる。ところが、スキャニングしたデータは、ピクセルで止まる。それ以上拡大しても情報量が増えない。モザイク状に孤立した点だ。ニュースの映像やアダルトビデオでモザイクがかかることがあるが、ピクセルを大きくした結果だ。モニターのピクセルは72DPIのまま、情報としてのピクセルを5DPIにさげるとモザイク状になる。5DPIの情報を72DPIの画素が描写している。ピクセルの数は72DPIだが、ピクセルの中味は5DPIだということである。

ピクセルに対して新しい考え方で取り組んだソフトもあらわれている。たとえばLivePictureだ(Macintosh版のほかにWindows版も発売予定)。ピクセルを孤立した点ではなく、網目状に連絡した座標ととらえる。もともと色の情報は格子状に規則正しく並んでいるわけではない。ぼけたりにじみながら面を覆っている。LivePictureは、作業の最後まで不規則な画像情報を保持しておくので座標間にあらたな座標を計算で作りだすことができる。画素の変形すらできる。

■15:線数、出力解像度はメーカーや機種によって微妙に違う

出力線数によって入力の解像度を決めると記したが、厳密にいえば175線と称しても、フィルムや印画紙にアミ点や画線を印画するフィルムレコーダー(イメージセッター)のメーカーや機種によって微妙に違う。173線や180線のことがある。

133線までなら出力解像度は1200DPI、150線以上なら2400DPIと一般的にいわれているが、その解像度の数値にはフィルムレコーダーごとの微妙なずれがある。本来は、入力解像度と出力解像度は同じであるのが望ましい。出力線数は別個の話だ。画像がたどるプロセスのすべての装置の解像度を把握しないと良質の印刷は仕上がらないとはいっても、どのメーカーのどんなフィルムレコーダーで出力するのかを特定しながら仕事を進めるのは現状のDTPではむずかしい。デバイス・インディペンデントの確立はこれからだ。

■16:製版・印刷は、意志をもって情報を間引くこと。製版・印刷も編集である

カラー・スライド・フィルムは、染料で発色させているのに対し、印刷インキは顔料がベースである。顔料は染料に比べて彩度が落ちる。透過原稿を反射原稿に置き換える困難さに加えて、色素の違いも再現をむずかしくしている。

色の三原色の印刷インキ(プロセスインキ)であるイエロー、マゼンダ、シアンは純粋な色相にはない。ある色は、ほかの二色の要素を少しずつもっている。イエローインキには、マゼンダとシアンの要素が混入している。マゼンダとシアンも同じように他の色味を混在させている。プロセスインキの各色相は微妙にずれているというわけだ。イエロー20%、マゼンダ20%、シアン20%をかけあわせると、理論上は無彩色のグレイになるはずだが、プロセスインキのずれによって、実際は少し色味をもった刷り上がりになる。

スキャニングはまた、カラー・スライド・フィルムの濃度3.0を2.0まで圧縮する技術だ。製版・印刷は、さまざまな違いを乗り越えて再現=表現する技術である。透過原稿を反射原稿に置き換えるために解釈を下し、染料と顔料の彩度の違いのためにメリハリをつけ、プロセスインキの微妙な揺らぎを抑えるために修正を施す。グレイバランスを製版の指標にするのはこのためである。濃度の圧縮のためにコントラストの演出が必要になる。製版・印刷された映像は、再現というルールを守りながらオリジナルな映像を作りだす行為だ。

■17:ボリュームとコントラストというふたつの観点

色校正がでてきたら、ボリュームとコントラストというふたつの観点から製版傾向を把握しよう。

ボリュームは、全体の明るさ・暗さである。アミ点面積あるいはインキの総量と思ってもよい。気をつけたいのは、校正刷りと本番の印刷ではインキの量が変わることだ。本機刷り(本番の印刷)ではインキは盛ったほうが印刷物に力が出る。つまり、本機刷りでインキを盛ることを前提に、校正刷りでは、やや控えめなボリュームで、製版の階調再現を中心に見たほうがよいという原則が立つ。

いかにコントラストを演出しながら原稿の階調再現をするかがスキャニングの核心だ。コントラストも本機刷りを予想しながら点検しなければならない。インキを盛ると、暗部の大きなアミ点は名部の小さなアミ点よりもより太り、結果的にコントラストが強まる。全体の製版が眠くてどんより暗ければ、さらに暗くなるだけだ。コントラストの強い製版は、インキの盛りによって暗部のボリュームがさらに上がることになる。ボリュームとコントラストは、密接に関係している。ボリュームとコントラストが織りなす曲線が、製版カーブである。

■18:ふたつのシャープネス、エッジ効果と入力解像度

原稿の階調再現は、入力解像度、スクリーン線数、コントラスト(製版カーブ)、エッジ効果、出力解像度の五つの要素に依存している。

入力解像度と出力解像度は一致していると考え、製版カーブについてもここではふれない。重要なのは、階調とシャープネスは矛盾しないということだ。シャープネスを強めればなめらかな階調が失われると思いがちだが、違う。ふたつのシャープネスがある。エッジ効果を強めた見かけのシャープネスと、入力解像度を高めることによる本質的なシャープネスとである。なめらかな階調を求めたいなら十分に入力解像度を上げ、エッジ効果を極力弱めればよい。余裕のない解像度のなかでエッジ効果を強めれば、見た目のシャープネスは上がるが微妙な階調は失なわれる。

写真にふさわしい階調再現があるはずだ。強いエッジ効果がふさわしい作品も多くある。作品の階調は、五つの要素のデリケートな制御によって印刷物としてよみがえる。

■19:使用倍率に近いルーペを手に入れる

35mmフィルムを8倍に拡大使用するなら、スキャニングに出す前に、8倍のルーペでのぞいてみよう。フィルムが拡大されるのを体感しよう。粒子がどう表現されるのかもおぼろげにつかめるはずだ。15倍なら15倍ルーペが望ましい。印刷物として上がってきたとき、適切な解像度で分解されたかが理解できるようになる。